アーベル群の圏はlocally finitely presentable categoryです
昨日気付いて衝撃だったんですが、
僕が人生で一番最初に買った圏論の本の著者はずっと名前が読めませんでした。
Ji......jiri ? ジリ? なんか i の上に✓が付いてて読み方が分からないし、
みたいなノリだったのですがその本の著者、なんと Jiří Adámek だったのです。
定義
locally smallでfiltered colimitを持つ圏のobject c がfinitely presentable object (あるいはcompact object)であるとは,
値関手 がfiltered colimitを保存するときを言う.
filtered colimitの定義についてはnLab参照 filtered limit in nLab
実はfiltered colimitはdirected colimit (つまり帰納極限)だと思うことができるので、directed colimitと思うことにしましょう。
このブログはアーベル群と腸についてのブログなので、アーベル群の圏について考えてみます。アーベル群の場合圏論的な一般論から導かれることはもっと初等的に証明できることの方が多そうですが、アーベル群の圏について圏論的な何らかを考えるときには一般論が便利なこともありそうです。
命題
において, 群がfinitely presentable objectであることと有限生成であることは同値.
定義通り言い換えると次の主張になります。
命題
アーベル群が有限生成 任意の帰納極限で書ける群について
片方はホモロジー代数の本によく載っているように思います。
アーベル群 (-加群) で考える限り有限生成でよいですが, -加群では有限表示にする必要があります。-加群の場合を意識してできる限り圏論的な証明を心がけます。
証明
()
が有限生成とすると完全列があり, さらに
はNoether環だから完全列がある.
とすると, colimitの普遍性から縦の射が生える.
ここで右の2つの射は同型である:
ここでfiltered colimitが有限極限と交換することを使ったことに注意する.
five-lemmaにより左端の下向きの射も同型である. よっては帰納極限と交換する.
()
のすべての有限生成部分加群たちとその間の包含射からなる帰納系を考えるとはこれらの帰納極限として表せる.
仮定から
と帰納極限が交換する. Homの左完全性から右辺の帰納極限を与える帰納系も包含射によって与えられているから, 帰納極限の構成からcoconeを与える射 も単射になっていて は たちの和集合になっている.
(こういうチェックをちゃんと書こうとも思うので気が向いたら随時書き足していきたいです)
において上向きの射はのpostcomposition, 斜めの射は埋め込みとする. に対応するの元を像に含むようなを選べば,
とでき, これは分裂射である.
よって, retractionが単射だから.
は有限生成である.
はてなブログで図式が満足に書けないのがつらい......。
におけるfinitely presented objectが有限生成(有限表示)アーベル群であることが分かりました。アーベル群は有限生成部分群たちの帰納極限で書けるので
次の定義の条件を満たすことが分かります。
定義
圏がlocally finitely presentable categoryであるとは, 次の条件を満たすことを言う:
- 余完備である.
- finitely presentable objectからなるがあって、任意のobjectはのobjectのfiltered colimitで書ける.
個人的には locally presentable categoryの随伴関手定理なんかが使えるとの反映的充満部分圏について考えるのが楽になったりならなかったりします。そういうのは真に圏論的なので初等的な議論から持ってくるのも難しいし、やはり圏論には圏論を、という感じがします。
こういう概念はこの本の一番最初に載っています。
Locally Presentable and Accessible Categories (London Mathematical Society Lecture Note Series)
- 作者: J. Adamek,J. Rosicky
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 1994/03/10
- メディア: Kindle版
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ところで、例の僕が人生で最初に買った圏論の本なのですが、
それは高校の時にシンガポールに行って土産にシンガポールの紀伊国屋で何らかを買ってこようと思い、当時の自分なりに一番意味不明なものを選んだ結果買われたものでした。もちろん当時は圏論という言葉も知らなかったです。
飛行機の中で読めるだけ読んで降りる頃にはわからなくなっていたので、そのまま放置され現在に至るわけですが、
その本とはこれです。
Abstract and Concrete Categories: The Joy of Cats (Dover Books on Mathematics)
- 作者: Jiri Adamek,Horst Herrlich,George E Strecker,Mathematics
- 出版社/メーカー: Dover Publications
- 発売日: 2009/08/03
- メディア: ペーパーバック
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その数か月後に当時三年生だったFという人に出会い、圏論の話を聞くことになるとは夢にも思いませんでした。そのときにはこの本の存在はすっかり忘れ、マクレーンの圏論の基礎を買ったと思います。
可除群の構造定理
うーん。毎日記事を書いている人って、本当に天才ですね。
世間の人気ブロガーが毎日毎日カタカタと証明を打ち込んでいるのかと思うととても真似できないなあと思います。
ベタな話題というか、かなり標準的な話になってしまうのですが
あんまり可除群の構造定理の記事がないなあと思ったので、みんな知っていそうですがこの記事を書こうかなあと思いました。
実際「有限生成アーベル群の構造定理」で検索するとダーっと記事が出てきますが、
「可除群の構造定理」で検索してもWikipediaの記事が一番上に出てくる他は全部有限生成アーベル群の構造定理の記事です。 (完全に乗っ取られている)
可除群の定義
一応定義を書いておきます。
定義
アーベル群が可除群(divisible group)であるとは,
各元について方程式が任意のに対して解を持つときを言う.
可除加群の例
- これは定番です。
- Prüfer群と呼ばれる群です。
- よく出てきますが、実はこれはPrüfer群の直和 .
- これはねじれ部分とねじれなし部分の直和に分けることができます。ねじれ部分は代表元が有理数の部分つまりで、ねじれのない部分は代表元が無理数の部分で実はの直和になります。
こういう事実を含む一般的な定理があって可除群は分類されています。
可除群の構造定理
定理
可除群は
と分解される.
証明のために次の事実を使います。
- 可除であることと移入的であることは同値。
- 移入的な部分群は直和因子である。
- ねじれ群は-ねじれ部分(位数が冪の元全体)の直和に分かれる。
「移入的 可除」は任意の-加群で正しいですが、「可除 移入的」はDedekind環上で正しい事実です。
定理の証明
可除群のねじれ部分も可除なので直和因子であり, とかける. と-ねじれ部分に分解する.
1. ねじれ部分
任意の元に対してで生成される部分群を考える.
の位数をとするとき, の和で生成される部分群 はPrüfer群 と同型である.
実際 を
によって定めればこれは同型である.
の部分群であっての直和であるようなもの全体をとし,
「がの直和因子」によって順序を定めると,
各元に対して上の事実からそれを含むと同型な部分群が存在しては空でなく, また任意の増大列には和集合を取ることで上界が存在するから, Zornの補題によってには極大元が存在する.
ここでは可除群の直和であって可除であるからこれも直和因子. と表せる.
の各元についてを含むようなと同型な部分群があるから, もに含まれ, の極大性から.
でなければならない.
こうしてはの直和でかける.
2. ねじれなし部分
証明はねじれ部分と類似である. の各元について,
は任意ので解を持つ. またがねじれを持たないから解は一意に決まるから, はwell-definedであって, しかも同型であることが確かめられる.
上と同じようにの部分群であっての直和であるようなもの全体をとし,
「がの直和因子」によって順序を定めると, その極大元はと一致する.
あともう少しだけ。
さらにこの直和の濃度がそれぞれ一意的であることも示すことができます。これはベクトル空間の次元の一意性と同じ証明です。
実際この直和の濃度を独立集合(independent set)の濃度と考えることができるからです。
定義
アーベル群の部分集合が独立集合であるとは, 任意の個の元の線形結合について
を満たすことを言う.
ねじれなし元からなる独立集合のうちで極大なものの濃度は、前回の記事で書いたねじれランクと呼ばれます。一般に極大な独立集合の濃度をアーベル群のランクと言います。
この記事はまた編集するかもしれないので、一応暫定版ということにします。
実は可除群の構造定理の証明をちゃんと読んだことがなかったのでブログはいい機会になります。皆さんもぜひブログを書いてみてください。(これ誰に言っているのか分からないけど)
参考文献は例によってFuchsです。
Abelian Groups (Springer Monographs in Mathematics)
- 作者: László Fuchs
- 出版社/メーカー: Springer
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下痢をしないよう湯たんぽでお腹を暖めています
おはようございます。僕の夢は「腸内」で検索した腸に悩める人々の検索欄をこのブログで制圧することです。
なぜお腹が冷えるとお腹が痛くなると思いますか?
答えはGoogleで👏👏👏
携帯からも記事が書けるのかなあと思ってテストしたら案の定書けました。せっかくなので一句
冬の雨
音に冷え入る
ガラス越し
もうしません。
ランク1のねじれなし加群の分類
最近はアーベル群の本を読むのが楽しいし、疲れた時にアーベル群の記事を書くようなブログにしようと思います。
というか最近よくない気持ちでこういう本を買いました。
Abelian Groups (Springer Monographs in Mathematics)
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値段はこんな感じですね。
節約生活をします。
さて、アーベル群についてのことを最初に調べたのは半年ほど前ですが、そこでわりと心がひかれたのはねじれなし加群(torsion-free module)だと思います。
(注: ここで加群とは加群のことを指します。だからすべてのねじれなし加群は平坦加群。やったぜ。)
というかねじれなし加群の例なんてそのときはとその直和とくらいしか知らなかったので、分類と言われてもそんなにピンと来ませんでしたが、実際に分類をしてみると「確かに」という気持ちになりますね。
細かいことは後回しにして、まず
がランク1のねじれなし加群
だと思うことができます。
まずはや以外の例を挙げてみましょう。
例えば ]
これは多項式環の不定元にを代入したものですが、その元を通分してもっと明示的に書くとということになります。1がで無限回割れるような群ということですね。これは確かにねじれなし加群です。
じゃあ、有限回割れるものとかそういうのは?という気持ちになりますが、
たとえば1がで2回だけ割れるような群 を考えてみると
は同型射なので、残念ながらこれはただのですね。残念。
とするとほかに脳死状態で思いつくのは
]] とか ] とか、まあこういうやつらもねじれなし加群です。
あとは各素数で無限回割れるか割れないかみたいな感じの群くらい。なんかあんまなくね?という気がしてくるわけですが、
よく考えるともう少しありそうな気もしてくるわけです。
有限回割れるものを除いたけど、有限回割れる素数が無限個とかあればそれなりに何らかができるのでは?
たとえば1がすべての素数 で1回ずつ割れるような群とが
さっきみたいに同型になるかというと、うまく同型射が作れないので違う群かもしれないという風に思えてきます。
そう考えると、なんかいろいろあるのではないかという気もしてくるわけです...... 。
あっ、この記事は がちゃんと仕事をするかどうかのテストのつもりで書いています。
いや、さっそく仕事してます。いいロゴです。
Abel群のランク
せっかくなのでもう少し書きます。そもそもAbel群のランクという言葉ってどれくらい普及しているんでしょうか。僕はずっと有限生成Abel群のの右肩に乗っている数くらいに思っていたし、は無限生成だからランクは無限、と思っていました。
でもここでいうランクはそういう定義ではなく、ねじれなしランクと呼ばれるものです。これで言うとのランクは1です。
定義
ねじれなし加群の(ねじれなし)ランクとは のことである。
注: これだとねじれなし加群専用の定義ですが、「上独立な部分集合のうち極大なものの個数」という風な同値な定義をすれば、ねじれがあっても定義できます。
(たとえばそういう風に定義するときは、一般にねじれのある加群に対して「極大な独立集合のうちでねじれのない部分の濃度」というのがねじれなしランクのことです。)
特徴付け
がねじれなし加群であることの特徴付けとして、
「任意の に対して がいつも単射」
というものがあります。
つまりねじれなし加群は必ずを含みます。
がねじれなし加群であることの特徴付けとして、
というものがあります。をテンソルしたときに消える部分はちょうどねじれ部分と一致しているのでこうなりますね。つまりランク1のねじれなし加群はの部分群です。
さらにの部分群は必ずねじれがありません。つまり
ということになります。
指標(characteristic)
ここで指標というものを導入してみます。指標群の指標とは違います。
まずの -高さとはという方程式がに解を持つようなの最大値のことです。
最大値がないときは高さと定めます。
で、これをダーっと並べます。
この列を指標と呼びます。
これを使ってランク1のねじれなし加群を分類していきます。
ここで指標は各元に対して定まっているものですが、
がランク1のねじれなし加群の場合を含むのでとくに1という元があり、
さらににも埋め込まれるので、1がpで何回割れるかさえ分かってしまえば他の元がで何回割れるかというのは全部わかってしまいます。
つまり, のみを考えればの任意の元の指標を考えられるので、これだけを考えて分類することにしましょう。ランク1の場合に限り、をの指標と呼ぶことにします。
具体的な指標を見てみましょう。指標は 2, 3, 5, 7 ...と並べていくことにします。
- の指標は
- ] の指標は
- ] の指標は
- の指標は
- の指標は
型(type)
2つの指標が与えられたとき、それらの指標を持つランク1のねじれなし加群が同型になるのはどのようなときでしょうか。指標の全体をうまく同値関係で割っていきたい気持ちが生えます。
今挙げた例の中でと は同型でした。
だから
つまり各項の差が有限だったら同値という風に定めたいわけですが、
さっき例を考えたときに何やらほかにもありそうな気がしたわけでした。
次のような群を考えてみます。
1は各素数で1回ずつ割れます。つまり指標は
しかし、こういう群はと同型ではありません。(同型射があるとすると1に送られるようなの元があるから、任意のに対して
という方程式がで解を持つことになってしまいます。)
こういうのをうまく加味して次のような同値関係を考えます。
定義
2つの指標とについて、
有限個の項だけが異なり、しかもその差が有限であるとき
同値であると定義する。
この同値類を型と言います。
おわり。
分類が終わりました。
まず、
命題
2つのランク1ねじれなし加群が同型 2つの群の型が一致する。
適当な証明
()
ランク1のねじれなし加群を標準的にの部分群だと考えることにする.
ランク1のねじれなし加群の間の射は1の送り先を決めることで完全に決定されることに注意する. 実際, ランク1ねじれなし加群の間の射で
1がに送られるなら, は を満たすに送られるが, にねじれ元がないからこのような方程式の解は存在すればuniqueである.
2つのランク1ねじれなし加群が同型でその間の射は で与えられるとすると全単射性から
がで解を持つ がで解を持つ
ということが確かめられる.
つまり(における指標をそれぞれ と書くとき)
である. の指標との指標の差はの素因子の分しかなく, 有限項の有限の差しかない。
よって .
()
上でやったことを逆にたどればよい.
ならその差 を与える素数は有限個だからそれを とする.
またその差は有限だから, その差をそれぞれとする.
は同型を与える. (確かめたらわかる)
次の主張で分類は決着が付きます。
命題
任意の指標について、その指標を実現するようなランク1のねじれなし加群が存在する。
証明
指標が与えられたとき, (素数に対応する項をと書くことにする.)
の部分集合で次のようなものをとる:
で上生成される群はを含み,
の指標がもとのものと一致することも確かめられる.
最初に例を並べたときは何やら複雑なのかと思ってしまいますが、ちゃんと考えると大したことはなかったという感じですね。
こういうしょーもない話題をしょーもあるかのように書けるのはブログの素晴らしいところだと思います。
ランク2
一方でランク2になった瞬間に分類問題は未解決で、よくわからない例がたくさんあります。一瞬ランク1の群の直和に書けるのではないか?と思ってしまいますが、そんなことはありません。
「有限ランクのねじれなし加群の直和分解について」という題の本もありますし、読んでいきたいですね。
人々、初めまして
おはようございます。今日からブログを始める腸内環境異常者です。
明日にはやめていると思いますが、やはりこの一瞬が大切だと思いませんか?
話をするとしたら、
その日に使ったウォシュレットの話や、
(ウォシュレットに付いている音姫などの)音楽の話や、
(ウォシュレットを描いた)絵画の話や、
(より見やすい「お手洗い」の文字を目指した)書道の話や、
(より座りやすいウォシュレットのクラスを見つけるための)数学の話になると思います。
ウォシュレットも音楽も数学も肌で温かさを感じたいですね。
だから「肌で温かさを感じる」、ことをモットーに今日からはウォシュレットに座って、暇になったらブログを書いていきたいと思います。
そうすればいつか世界は平和になると思います。
実は僕、
ウォシュレットに興味ありません。
お腹痛い。トイレ行く。
人間は、以上。