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ランク1のねじれなし加群の分類

アーベル群

 

 

最近はアーベル群の本を読むのが楽しいし、疲れた時にアーベル群の記事を書くようなブログにしようと思います。

というか最近よくない気持ちでこういう本を買いました。

 

Abelian Groups (Springer Monographs in Mathematics)

Abelian Groups (Springer Monographs in Mathematics)

 

 

値段はこんな感じですね。

節約生活をします。

 

 

 

さて、アーベル群についてのことを最初に調べたのは半年ほど前ですが、そこでわりと心がひかれたのはねじれなし加群(torsion-free module)だと思います。

(注: ここで加群とは\mathbb{Z}加群のことを指します。だからすべてのねじれなし加群は平坦加群。やったぜ。)

 

というかねじれなし加群の例なんてそのときは\mathbb{Z}とその直和と\mathbb{Q}くらいしか知らなかったので、分類と言われてもそんなにピンと来ませんでしたが、実際に分類をしてみると「確かに」という気持ちになりますね。

 

細かいことは後回しにして、まず

 Aがランク1のねじれなし加群  \Leftrightarrow  \mathbb{Z}\subset A\subset \mathbb{Q}

だと思うことができます。

 

まずは \mathbb{Z} \mathbb{Q}以外の例を挙げてみましょう。

 

例えば  \mathbb{Z}[1/p]

これは多項式環の不定元に 1/pを代入したものですが、その元を通分してもっと明示的に書くと \{m/p^n \, | \, n,m\in \mathbb{Z}\}ということになります。1が pで無限回割れるような群ということですね。これは確かにねじれなし加群です。

 

じゃあ、有限回割れるものとかそういうのは?という気持ちになりますが、

たとえば1が pで2回だけ割れるような群  (1/p^2) \mathbb{Z}=\{m/p^2 \, | \, m\in \mathbb{Z}\} を考えてみると

 \times p^2: (1/p^2) \mathbb{Z}\to \mathbb{Z} は同型射なので、残念ながらこれはただの \mathbb{Z}ですね。残念。

 

とするとほかに脳死状態で思いつくのは

 \mathbb{Z}[1/6] =\mathbb{Z}[1/2, 1/3] とか  \mathbb{Z}[1/2, 1/5, 1/13, 1/17, 1/107] とか、まあこういうやつらもねじれなし加群です。

あとは各素数で無限回割れるか割れないかみたいな感じの群くらい。なんかあんまなくね?という気がしてくるわけですが、

よく考えるともう少しありそうな気もしてくるわけです。

 

有限回割れるものを除いたけど、有限回割れる素数が無限個とかあればそれなりに何らかができるのでは?

たとえば1がすべての素数  2, 3, 5, 7, \cdotsで1回ずつ割れるような群と \mathbb{Z}

さっきみたいに同型になるかというと、うまく同型射が作れないので違う群かもしれないという風に思えてきます。

そう考えると、なんかいろいろあるのではないかという気もしてくるわけです...... 。

 

 

あっ、この記事は \TeX がちゃんと仕事をするかどうかのテストのつもりで書いています。

いや、さっそく仕事してます。いいロゴです。

 

 Abel群のランク

せっかくなのでもう少し書きます。そもそもAbel群のランクという言葉ってどれくらい普及しているんでしょうか。僕はずっと有限生成Abel群の\mathbb{Z}の右肩に乗っている数くらいに思っていたし、\mathbb{Q}は無限生成だからランクは無限、と思っていました。

でもここでいうランクはそういう定義ではなく、ねじれなしランクと呼ばれるものです。これで言うと\mathbb{Q}のランクは1です。

 

定義 

ねじれなし加群Aの(ねじれなし)ランクとは {\rm dim}_{\mathbb{Q}} (A\otimes \mathbb{Q}) のことである。

 

注: これだとねじれなし加群専用の定義ですが、「\mathbb{Z}上独立な部分集合のうち極大なものの個数」という風な同値な定義をすれば、ねじれがあっても定義できます。

(たとえばそういう風に定義するときは、一般にねじれのある加群に対して「極大な独立集合のうちでねじれのない部分の濃度」というのがねじれなしランクのことです。)

 

特徴付け

 Aがねじれなし加群であることの特徴付けとして、

 「任意の  x\in A に対して  \mathbb{Z}\to A; 1\mapsto x がいつも単射

というものがあります。

 つまりねじれなし加群は必ず \mathbb{Z}を含みます。

 A がねじれなし加群であることの特徴付けとして、

 \mathbb{Q}テンソルする射  A\to A\otimes \mathbb{Q}; \, x\mapsto x\otimes 1単射

というものがあります。 \mathbb{Q}テンソルしたときに消える部分はちょうどねじれ部分と一致しているのでこうなりますね。つまりランク1のねじれなし加群 \mathbb{Q}の部分群です。

 さらに \mathbb{Q}の部分群は必ずねじれがありません。つまり

 Aがランク1のねじれなし加群  \Leftrightarrow  \mathbb{Z}\subset A\subset \mathbb{Q}

ということになります。

 

指標(characteristic)

ここで指標というものを導入してみます。指標群の指標とは違います。

まず a\in A p-高さ h_p(a)とは p^k x=aという方程式が Aに解を持つような kの最大値のことです。

最大値がないときは高さ \inftyと定めます。

で、これをダーっと並べます。

 \chi (a):=(h_2(a), h_3(a), h_5(a), h_7(a), \cdots )

この列を指標と呼びます。

これを使ってランク1のねじれなし加群を分類していきます。

 ここで指標は各元に対して定まっているものですが、

 Aがランク1のねじれなし加群の場合 \mathbb{Z}を含むのでとくに1という元があり、

さらに \mathbb{Q}にも埋め込まれるので、1がpで何回割れるかさえ分かってしまえば他の元 q/r\in A\subset \mathbb{Q} pで何回割れるかというのは全部わかってしまいます。

つまり,  \chi (1)のみを考えれば Aの任意の元の指標を考えられるので、これだけを考えて分類することにしましょう。ランク1の場合に限り、 \chi(1) Aの指標と呼ぶことにします。

 

具体的な指標を見てみましょう。指標は 2, 3, 5, 7 ...と並べていくことにします。

  •  \mathbb{Z}  の指標は   (0 , 0, 0, 0, 0, \cdots)
  •  \mathbb{Z}[1/2]  の指標は   (\infty , 0, 0, 0, 0, \cdots)
  •  \mathbb{Z}[1/3, 1/5]  の指標は   (0, \infty, \infty, 0, 0, \cdots)
  •  \mathbb{(1/9)Z}  の指標は   (0, 2, 0, 0, 0, \cdots)
  •  \mathbb{Q}  の指標は   (\infty ,\infty ,\infty ,\infty ,\infty , \cdots)

 

型(type)

2つの指標が与えられたとき、それらの指標を持つランク1のねじれなし加群が同型になるのはどのようなときでしょうか。指標の全体をうまく同値関係で割っていきたい気持ちが生えます。

今挙げた例の中で \mathbb{Z} (1/9)\mathbb{Z}は同型でした。

だから

 (0, 0, 0, 0, 0, \cdots)\sim (0, 0, 2, 0, 0, \cdots)

つまり各項の差が有限だったら同値という風に定めたいわけですが、

さっき例を考えたときに何やらほかにもありそうな気がしたわけでした。

次のような群を考えてみます。

 \displaystyle A:= \bigcup _{p: {\rm prime}} \frac{1}{2\cdot 3\cdot 5\cdot \cdots \cdot p}\mathbb{Z}

1は各素数で1回ずつ割れます。つまり指標は

 (1, 1, 1, 1, 1, \cdots )

しかし、こういう群は \mathbb{Z}と同型ではありません。(同型射 A\to \mathbb{Z}があるとすると1に送られるような Aの元があるから、任意の pに対して

 px=1という方程式が \mathbb{Z}で解を持つことになってしまいます。) 

 

 こういうのをうまく加味して次のような同値関係を考えます。

 

定義

2つの指標 (k_1, k_2, \cdots ) (l_1, l_2, \cdots )について、

有限個の項だけが異なり、しかもその差が有限であるとき 

同値であると定義する。

 

この同値類をと言います。

 

おわり。

 

分類が終わりました。

 

まず、

命題

2つのランク1ねじれなし加群が同型  \Leftrightarrow 2つの群の型が一致する。

 

適当な証明

( \Rightarrow)

ランク1のねじれなし加群を標準的に \mathbb{Q}の部分群だと考えることにする. 

ランク1のねじれなし加群の間の射は1の送り先を決めることで完全に決定されることに注意する. 実際, ランク1ねじれなし加群の間の射 A\to B

1が xに送られるなら,  q/r \in A \subset \mathbb{Q} ry=qxを満たす y\in Bに送られるが,  Bにねじれ元がないからこのような方程式の解は存在すればuniqueである. 

2つのランク1ねじれなし加群 A, Bが同型でその間の射は  f: 1\mapsto q/rで与えられるとすると全単射性から

 p^kx=1 Aで解を持つ  \Leftrightarrow \ p^kx=q/r Bで解を持つ

ということが確かめられる. 

つまり( A, Bにおける指標をそれぞれ  \chi_A, \chi _Bと書くとき)

 \chi_A(1)=\chi_B(q/r)

である.  \chi_B(q/r)の指標と \chi_B(1)の指標の差は q/rの素因子の分しかなく, 有限項の有限の差しかない。

よって  \chi _A(1)\sim \chi_B(1)

( \Leftarrow)

上でやったことを逆にたどればよい. 

 (k_1, k_2, \cdots )\sim (l_1, l_2, \cdots )

ならその差  l_i-k_i を与える素数は有限個だからそれを  p_1, \cdots ,p_m とする. 

またその差は有限だから, その差をそれぞれ d_1, \cdots , d_mとする. 

 1\mapsto p_1^{d_1}\cdot  \cdots \cdot p_m^{d_m}

は同型を与える. (確かめたらわかる)

 \square

 

次の主張で分類は決着が付きます。

 

命題

任意の指標について、その指標を実現するようなランク1のねじれなし加群が存在する。

 

証明

指標 (k_1, k_2,\cdots )が与えられたとき, (素数 p_iに対応する項を k_iと書くことにする.)

 \mathbb{Q}の部分集合で次のようなものをとる: 

 S:= \{ p^{-l_i}_i \, | \, p_i: {\rm prime}, \, l_i\leq k_i\}

 S \mathbb{Z}生成される群は 1を含み, 

 1の指標がもとのものと一致することも確かめられる. 

 \square

 

最初に例を並べたときは何やら複雑なのかと思ってしまいますが、ちゃんと考えると大したことはなかったという感じですね。

こういうしょーもない話題をしょーもあるかのように書けるのはブログの素晴らしいところだと思います。

 

ランク2

一方でランク2になった瞬間に分類問題は未解決で、よくわからない例がたくさんあります。一瞬ランク1の群の直和に書けるのではないか?と思ってしまいますが、そんなことはありません。

「有限ランクのねじれなし加群の直和分解について」という題の本もありますし、読んでいきたいですね。

 

Direct Sum Decompositions of Torsion-Free Finite Rank Groups (Chapman & Hall/CRC Pure and Applied Mathematics)

Direct Sum Decompositions of Torsion-Free Finite Rank Groups (Chapman & Hall/CRC Pure and Applied Mathematics)